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SPECTACLE GARMENTS スペクタクルガーメンツ

2019年4月13日更新

連載 第9回
知られざるヴィンテージミシンの世界

毎度ご覧頂き誠にありがとうございます。ジェネラルガーデン店、高橋です。

今回は過去9回の中でも少しマニアックな内容となります。しかし、このヴィンテージアメリカンスタイルを貫き続ける物作りに於いては大変重要な要素となりますので最後までお付き合い頂けますと幸いです。

 

常日頃より皆様にご好評頂いています当店のお取扱いブランドの大半は、輝かしかった古き良きアメリカの物作りを踏襲することを基本として、そこへ各ブランドのアレンジやオリジナリティを加え、現代のファッションへ昇華させる物作りをしています。

その上で“縫製”という作業工程はアメリカンスタイルを表現するのに重要な役割を担います。

 

例えばジーンズ。

 

このジャンルに於いてマストアイテムとなりますが、主要部であるバックヨークや背部中央の縫製は、いわゆる「2本針巻き縫い」といわれる高強度な方法で縫い上げられていますが、こちらはヴィンテージミシンが無ければ縫うことが出来ません。

バックヨーク縫製(表側)

バックヨーク縫製(裏側)

 

つまり、ヴィンテージミシンが無ければジーンズ一本作ることが出来ないと言い換えることが出来ます。

 

そんなヴィンテージミシンの中でもとりわけ著名なものとしては「UNION SPECIAL」が挙げられます。そう、当店でもジーンズの裾直しの際お選び頂ける「チェーンステッチ」に使用されるミシンです。

既にご存知の方も多くいらっしゃるとは思いますが、このメーカーも現存しておらず、古くからある物を直し直し使っていくしか手段が無い大変貴重な物です。

店保有のUNION SPECIAL

 

多くのブランドでは全国各所に点在するヴィンテージミシンを保有する縫製工場に作業委託し物作りを行っていますが、デラックスウエアは自社工場を持ち自らの手で商品生産を行う数少ないブランドです。

そして今回はこのデラックスウエアの縫製に対するこだわりをお伝えさせて頂きたいと思います。

 

デラックスウエアの拠点となる秋田県にあります自社縫製工場。

その名も「オルダクト」。

 

デラックスウエア製品の全ての縫製を行うこの工場には1890~1960年に製造された60台を超えるヴィンテージミシンが歴史を越え、今も稼働し続けています。

その中には「スミソニアン博物館」級、つまり歴史的希少性の非常に高いものも含まれます。

そしてデラックスウエア村松社長はヴィンテージミシンへのこだわりについてこう語ります。

 

「2019年も1920年もミシンの機構に大きな差は無く、基本的な縫い方や縫い目など既に1900年初頭には完成されていたと言えます。しかし100年以上経過した現代のミシン設備は電子制御機能が供えられたこと、大量生産を前提とした専用性が向上したことで「扱い易く」なりましたが、言い換えれば職人技術である手仕事を反映し難いミシンだという事になります。現代はミシン設備力70%、人の力量が30%、1900年代初頭はミシン設備力30%、人の力量70%だったと思わせる衣類が数多く残っていることから過去のモノ創り技術力が高いことが伺えます。

 

 我々デラックスウエアが求めたのは、痒い所に手が届くその職人手仕事を反映したモノ創り技術力ですから必然的にミシン設備も古いヴィンテージミシンに目が向きました。

指のチカラ一つで寄せたり詰めたり伸ばしたりしながらカタチにするカットソー、曲線を駆使した立体形状を無理なくまとめるシャツ創りなど、どれも微妙な設定を必要とし時にはミシンの堅牢性を活かし大きなカスタマイズドを行いながらカタチにします。しかし不思議なことに全く同じ縫い方、縫い目でも見た目が微妙に異なり、味わいを基礎とするアメカジのモノ創りにおいては、やはりヴィンテージミシンの仕上がりがとても似合い魅力を感じるのです。折角数世紀変わらない同じ作業・縫い目であるなら、味わいに特化した高品質なモノ創りを可能にしたいという想いからデラックスウエア自社工場「オルダクト」にはヴィンテージミシンが数多く備えられ、そして今日も元気にフル稼働しています。」

 

そして今回は、デラックスウエアご協力の元、珠玉のヴィンテージミシンコレクションをご紹介致します。

Singer 99W 1920s ハトメ穴ミシン ※ジーンズなどのボタンホール用ミシン

 

Singer99Wは現在世界でも数台のみ稼働している大変希少なヴィンテージミシンです。

有名な話ではアメリカ「スミソニアン博物館」に展示されているほどの文化的価値を有し、当時価格は家一軒分に値したという噂まであります。

ただ唯一「ハトメボタンホールを開ける」ために存在しているミシンですが、キャムとギア、ハンマーという構造パーツを組み合わせることで様々なハトメ穴サイズで製造可能です。

UNION SPECIAL 35700 フルカスタム 1940s 二本針環縫い巻縫い

当時シャツ用として開発された35700ミシン。しかし当時のこの機種は三本針仕様のみであったものをデラックスウエアが独自カスタムして5.6mm二本針に変更したフルカスタムミシン。そういう意味ではこの世に一台のモデルです。用途はシャツの肩ハギ、アームホール、そして袖下脇下などの主要部分全般をこのミシンで仕上げますが操作に職人技術を要します。

UNION SPECIAL 35700 フルカスタム 1940s 二本針環縫い巻縫いと兄弟モデルの

UNION SPECIAL358 1960s 三本針環縫い巻縫いミシン

UNION SPECIAL 54400フルカスタム1960s 十二本針環縫いミシン

当時はシャーリング(ギャザーやゴム入れ)用として開発された特殊ミシン。12本針全てが環縫い(チェーンステッチ)に仕上がるこのミシンでは、シャツの上前立てを縫製しています。

多くの針とルーパー、縫製糸24本を使用する特殊環縫いミシンです。

UNION SPECIAL 5110 1940s 三本針上下振りミシン

Tシャツやスウェットのバインダー(首リブ)用ミシン。首一周にフライスを包み込み巻き付ける縫製をするこのミシンは、差動という生地を送る調整機能があるにも関わらず人の手加減で品質が左右する職人技術を有するミシン。

また、デラックスウエア・ダリーズ&コー製品の全ての首周りはこのモデルと後継機であるブラウンカラーモデルを同時使用しながら仕上げています。

こちらの4機がデラックスウエア保有のヴィンテージミシンの中でも特に希少なコレクションとなる訳ですが、静止画でお見せしてもピンとこないのが本音の所かと思います。

ということで本コラム初の動画にて皆様にご覧頂きたいと思います。

前出の「UNION SPECIAL 5110 1940s」の作業を、村松社長にしっかり解説して頂きました。

必見です。


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